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「ちあきなおみと歯医者の話」

投稿日:2018年1月24日 更新日:

<たかのこういち(著)>
<松本隆治(絵)>

駅前のカフェからコーヒーのいい香りが漂ってくる。

香りに誘われてビルの2階へ。昭和の雰囲気の残るゆったりとした店。京王線と世田谷線の交差するこの町は、下町の気さくな賑わいがあって、情も厚い。

窓際に座って、今日のおすすめ「ブラジル」を注文。隣の席の二人の女性の話が耳に入る。

「ちあきなおみのビデオ、1000円」。

「カラオケ用ね。いいね。黄昏のビギン。あの人、歌、うまいね」。

違う席から別の話が耳に届く。

「ダメよ、ママがちゃんと見てやらなくちゃ」。

小さな女の子と祖母とママ。女の子はパフェに夢中。

「早めに治療しなきゃ」。

祖母がママに言う。どうやら歯の話。

「歯医者って、当たりはずれがあるのよ。田辺さんとこのユキちゃん、虫歯でもう半年も通ってるんだって」と、ママ。

「そうだね。相性があるよ。まず、行ってみて、歯医者の先生を見ることよ。ダメなら違う歯医者に行けばいい。わたしがつれていってあげようか」。

「お母さんに頼めたらありがたいわ。お願いするわ」。

「ちょうどわたしも見てもらいたいし」。

「寒いね」。

「ほんと」。

新しい客が入ってきた。

「こたく先生、皆さん歯医者が嫌いですね」。

「残念ながら。ですからわたしは、もっと気楽に寄ってくれる歯医者を目指しています。いま、歯の予防が流行ってきましたし、定期的に検診することをおすすめします」。

下高井戸の歯をゲンキにしたい。こたく先生は、そう願っている。

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